私がパートを終えて家に帰る時、いつも散歩しているおじいさんがいる。
時折、軽くお話しているが、おじいさんの傍にはいつも愛犬のパグがいる。名前はゴン。この子も結構おじいさんらしい。
ゆっくり歩くおじいさん。それと同じペースで「のそのそ」と横を歩くゴン。
聞いた話だと、毎日朝晩散歩しているとのこと。
「正直最近はめんどくさいんだよ〜」とおじいさんはぼやいていたが、毎日散歩に行こうとゴンに急かされるようだ 笑
「でもゴンがいなかったらワシはとっくに歩けんようになっとるじゃろうなぁ」ともおじいさんは呟いた。
ある日、休みの日にたまたま会ったので、おじいさんとゴンの散歩に同行させてもらうことにした。
「なんも面白い事はないよ〜」とおじいさん
でもそんな2人と歩くだけでも癒される。
おじいさんとゴンの散歩ルートはそんなに長くない。
近くの公園まで数百メートル、そこまでは2人でボチボチと歩いていく。
おじいさんが止まれば、ゴンも止まる。
逆もまたしかり。長年のパートナーのようにお互いのことがよくわかっているようだ。
公園に着いたらベンチで一休み。おじいさんは公園で遊んでいる子供たちをニコニコしながら見守っている。
ゴンの方といえばおじいさんの足元でゴロゴロしている。
ゴンは公園で遊ぶ子供達の中でも大人気。子供たちが「ゴンだーー!!」と寄ってくる。
ゴンも子供のことが好きなようで、声がすると起き上がりトコトコと子供達の方へ撫でられに歩いていく。
それを眺めるおじいさんの表情もとても嬉しそうだ。
こんな公園で一時を過ごしたら2人は帰路につく。
公園を出たところでゴンの足がぴったり止まる。こうなったらもうゴンは動かないようだ。
おじいさんもやれやれといつもの事のように電池切れのゴンを抱っこする 笑
ゴンにとっての散歩はここまで、後はおじいさんの腕の中でまったりしながら家に着くのを待つそうだ。
数分歩いたらおじいさんの家が見えてきた。ゴンもここからは自分の足で歩くようだ。
「痛たた…」と腰を反らせるおじいさんをゆっくり待つ。
疲れたおじいさんを今度はゴンがのそのそとリードする。
その姿がとてもほのぼのしていて良かったので「本当に良いペアですね!」と言ったら「2人とも年寄りだから助け合いだね」と笑顔で答えてくれた。
『そうじゃ、そうじゃ』ゴンも目力のあるクリクリした目でこちらを見つめている。
「ではまた明日!」特に約束することはないが、明日もきっと散歩途中で出会うだろうと思ったら、本当に次の日に会った。
しかも、ゴンとだけ。
何やら様子がおかしいと思ってついて行くとおじいさんが倒れているではないか!
どうやらゴンを下ろすときに腰を痛めたらしい。
幸い大事には至らずすぐに救急車を呼んで数日間病院で安静にするだけで回復することができた。
その間ゴンは私の家で預かることになったが、おじいさんが迎えに来たときの嬉しそうな顔といったらなかった。
あのおじいさんが倒れた日、ゴンは疲れ切って歩けなかったはずなのに、走り回っておじいさんを助けてくれる人を探し回っていたそうだ。
この事で文字通りこの2人は最高のコンビだなぁと本気で思った。
お辞儀して楽しそうに歩いていく2人の背中を見つめながらこれからもおじいさんとゴンには元気でいてもらいたいと心から思いました。
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